2021年3月15日付け SARDENより抜粋
https://www.sarden.cz/2021-03-15-1700/anketa-kniha-roku-sardenu-2020-vysledky
チェコ・ファンタスチカのWEB誌SARDENがチェコとスロヴァキアの作家・翻訳家・評論家・編集者に、2020年に出版されたジャンル作品からベスト3の選出を依頼したアンケートを集計したもの(回答者数は37人。各人一~三作を選出。三作には選ばれなかったが、回答者のコメントで言及された作品も補助点1としてカウントされている)。
※印がついているのはチェコもしくはスロヴァキアの作品
1位(7票)
『Meta』※(パヴェル・バレシュ Pavel Bareš)
「考え抜かれたプロット、卓越した言葉の使い方、驚くほどたくさんの唸るようなアイディア、これはまさにチェコの
小説にとって天啓というべき作品だ」 ペトラ・ディーストレロヴァー(翻訳家)
2位(5票)
『The Stone Sky』(N・K・ジェミシン)《破壊された地球》三部作 第三部
『Město v oblacích(雲の中の都市)』※
(クリスティーナ・スニェゴニョヴァー Kristýna Sněgoňová)
「この作者の前二作は「楽しめ」たというだけだったけど、『雲の中の都市』は巻を措く能わずで、最後まで一気に
読んでしまった」 テレザ・カドゥレチュコヴァー(編集者・作家)
4位(3票+1点)
『Foundryside』(ロバート・ジャクソン・ベネット)《The Founders》三部作 第一部
5位(3票)
『グイランのハープ』(アーシュラ・K・ル=グイン)チェコ・オリジナル編のル=グイン短編集
『Cage of Souls』(エイドリアン・チャイコフスキー)
7位(2票+3点)
『Chlad Chiméry(コールド・キマイラ)』※
(ヤン・ハラーフカ Jan Hlávka & ヤナ・ヴィビーラロヴァー Jana Vybíralová)
《氷の惑星アルゴル》シリーズ第4巻
8位(2票+1点)
『A Darkling Sea』(ジェームズ・L・カンビアス)
『Raven Stratagem』(ユーン・ハ・リー)
《Machineries of Empire》三部作 第二部(第一部は『ナインフォックスの覚醒』)
10位(2票)
『Dryák』(ドゥリアーク)※(フランチシェク・ノヴォトニー František Novotný)
『Beyond Redemption』(マイケル・R・フレッチャー)
『Pán čarodějů(魔法使いたちの王)』※(ペトラ・スロヴァーコヴァー Petra Slováková)
『Prokletá věž(呪われた塔)』※(ミハエラ・メルグロヴァー Michaela Merglová)
『Fated』(ベネディクト・ジャッカ)《Alex Verus》シリーズ第1巻
『A Little Hatred』(ジョー・アバークロンビー)《The Age of Madness》三部作 第一部
『銀をつむぐ者 氷の王国と魔法の銀』(ナオミ・ノヴィク)
『The Top of the Volcano: The Award-Winning Stories of Harlan Ellison』
( ハーラン・エリスン)
〔Neklan ひとこと〕
2017年の長編デビュー作『Projekt Kronos(プロジェクト・クロノス)』、第二作の『Kronovy děti』(クロノスの子どもたち)』の《プロジェクト・クロノス》シリーズがSarden誌のアンケート「2015年から2019年にチェコで発表されたSF・ファンタジィのベスト」で第2位に選ばれ、第三作『Meta』が年間ベスト1という快進撃を続ける期待の新鋭パヴェル・バレシュ(1994 - )。現代のチェコを舞台にしたスーパー・ヒーローものという『Meta』は、とにかく設定・文体・リーダビリティとあらゆる面において高い評価を得ていて、早く読んで紹介したいと思っているのですが、なかなかそこまでたどりつかず、自分の非力さが申し訳ないです。
第2位のクリスティーナ・スニェゴニョヴァー『Město v oblacích(雲の中の都市)』はジャケ買いしましたが、ディストピアの空中都市からの脱出を描いた作品ということで、使い古された感のあるこの設定をどう料理したのか気になるところ。早く読みたいのは同じく。ホント、すいません。
その他のチェコ作品では、第7位のヤン・ハラーフカ&ヤナ・ヴィビーラロヴァーの《氷の惑星アルゴル》シリーズ第4巻『Chlad Chiméry(コールド・キマイラ)』は安定した人気。
第10位のペトラ・スロヴァーコヴァー『Pán čarodějů(魔法使いたちの王)』、ミハエラ・メルグロヴァー『Prokletá věž(呪われた塔)』は、今のチェコでは女性作家のファンタジィ、ホラーが高い人気を得ているという現状のあらわれでしょう。
同じく第10位の『Dryák(ドゥリアーク)』は、平凡社の『チェコSF短編小説集』に収録されて日本のSFファンにも好評だった「ブラッドベリの影」の大ベテラン、フランチシェク・ノヴォトニー(1944 - )による17世紀のヨーロッパを舞台にした並行世界の歴史ファンタジィということなので、ちょっと食指が。