チェコとスロヴァキアのファンタジィ小説のファーストレディたちの作品をまとめて知ってもらいたい
ファンタジィ、ホラー、そしてＳＦにおけるわれらが女性トップ作家たちの短編アンソロジー
全四巻の刊行を計画中です
ウェルズ、ヴェルヌ、アシモフ、その他の作家の忘れがたい遺産があるとはいえ、ファンタスチカ（訳注１）文学は男性だけのものではありません。それどころか、男性作家たちと同様、女性作家も既にその誕生時から一緒に形成にたずさわってきました。ゴシック文学の礎石であるメアリー・シェリーの「フランケンシュタイン」、メアリー・グリフィス（訳注２）のユートピアのヴィジョン、イーディス・ネズビット（訳注３）の長短編、もしくは大きな影響を及ぼしたアーシュラ・Ｋ・ル＝グィンの作品等を思い出すだけでも十分でしょう。わたしたちが読者にまとめて紹介したいと思っている現在のチェコとスロヴァキアのファンタスチカ作品もそれらに連なります。
訳注１．ファンタスチカ： スラヴ語圏でＳＦ、ファンタジィ、ホラー等を包括的に表現する際に用いられる語。
訳注２．メアリー・グリフィス（1772－1846）： アメリカの作家、園芸家、科学者。彼女の小説「三百年後（Three Hundred Years Hence）」（1836）はアメリカ人女性によって書かれた最初のユートピア小説として知られている。
訳注３．イーディス・ネズビット（1858－1924）： イギリスの小説家、詩人。児童文学作家として知られ、「現実性・同時代性」と「魔法・冒険」を組み合わせた手法で、「最初の現代的な児童文学作家」とも評される。代表作は「宝さがしの子どもたち」（1898年）、「砂の妖精」（1902）他多数。
なぜわれわれに寄付すべきか？
チェコとスロヴァキアの女性ファンタスチカ作家たちは多くの成功をおさめています。読者と批評家を魅了したヴィルマ・カドゥレチュコヴァーのSFサーガ【ミツェリウム】、フランチシュカ・ヴルベンスカーはすぐれた専門書や一般向けの作品で有名ですし、ユリエ・ノヴァーコヴァーはチェコ国内の市場のみならず、「アシモフズ誌」や「クラークスワールド」といった外国の雑誌に定期的に作品を発表しています。にもかかわらず、彼女たちの作品の決定版的アンソロジーはまだありません。「貴婦人と獅子」はこのような状況の改革を目指しています。今こそあなたはその一翼を担うことができるのです。
集められたお金はプロジェクトをスタートさせる助けになります。わたしたちはスタート地点に立ったたばかりで、まだまだ長い道のりが待っています。同時に、これらのお金によって、より大部数の、よりハイクオリティの、そしてハードカバーという、われらの作家たちが受けるにふさわしい本を印刷することができるようになるでしょう。そして、デザインとグラフィック・ワークにもきちんとした報酬を払い、このクラウドファンディングの寄付者であるみなさんへの特別なお礼の品に予算を充てることができるのです。今年のクリスマスにはわたしたちの計画が実現するようご助力をお願いします。そして、あなたのパートナーやお母さんにオリジナルなクリスマス・プレゼントを贈る機会を手にしてください。
いかにしてアイディアは生まれたか？
このプロジェクトは一年ほど前、作家たち自身によるちょっとした呼びかけから生まれました。二人の作家・評論家、フランチシュカ・ヴルベンスカーとズザナ・フロウシュコヴァーがＳＦ大会後の集まりで、本の市場の状況やその他の興味深い事柄についてざっくばらんに話し合っていた時。女流ファンタスチカのアンソロジーがまったくないことに気づいたのです。そしてここにアイディアが誕生しました。
まずFacebookでグループが作られ、それが次第に成長。メンバーがお互いにサポートし、アイディアを提供し合うようになりました。作家たちは皆、短編に求められる点を記したプロジェクトの取り決めに同意しました（女性が主人公。彼女は浅慮ではなく、一人の確固とした人間であり、目標に向って突き進み、運命と戦い、同時に暴力的でない解決を選ぶことができる。短編の主人公を男性にしても構わないが、その場合、女性キャラは同等のパートナーもしくは敵役で、エロが目的の消極的な存在ではない。作中の創造世界では女性も男性もそれぞれ自分の居場所があり、そのバランスを維持するという意味において彼らは重要な存在である）。
やがてグループには５０人以上の作家が参加。その中には既に名声を確立した作家だけではなく、若い世代、あるいは新人で才能ある地方作家もたくさんいます。例えばフランチシュカ・ヴルベンスカー、ヤナ・レチュコヴァー、ルツィエ・ルカチョヴィチョヴァー、ペトラ・ネオミルネロヴァー、ハニナ・ヴェセラー、ダース・ズィル、ユリエ・ノヴァーコヴァー、アナ・ショホヴァー、伝説的存在ルドミラ・ヴァニュコヴァーまでも。さらにはファンタスチカ小説以外でも有名なズザナ・コウプコヴァー、ダニエラ・コヴァージョヴァー、ヴェロニカ・ヴァオルコヴァーといった作家たちも加わりました。このプロジェクトには８人の作家がスロヴァキアから参加し、国際的な様相も呈しています。まさに「お楽しみはこれからだ」なのです。
「貴婦人と獅子」登場！
ここまでの紹介でおわかりのように、すぐれた作品がこれだけたくさん寄せられれば、一冊の本には収まりきれません。そこでわれわれはアンソロジーを四分冊にすることを思いつきました。その一冊目のタイトルが「貴婦人と獅子」です。これはタロットカードで「力」を意味する同名のカードから発想しました。
その後、毎回半年の間隔をおいて、三巻（「貴婦人とふくろう」「貴婦人と龍」「貴婦人と白鳥」）が続きます。しかし、すべてはプロジェクトのスタート、第一巻の成功次第です。そこでわれわれを助けられるのはあなたです。
本の内容、もしくはどんなお楽しみが
各巻ともファンタスチカ文学のジャンル的多様性の代表例であるファンタジィ、ＳＦ、ホラー、スチームパンク、ポスト・アポカリプス、ユーモア、サイバーパンク、歴史改変もの等の短編13本が収録されます。第一巻には題名になったカード「貴婦人と獅子」にちなみ、ヒロインとヒーローたちの内面的パワーの様々な形を描いた作品を選ぶことに重点がおかれています。編集のズザナ “ザンガドラ” フロウシュコヴァーとフランチシュカ・ヴルベンスカーは長年チェコのファンタスチカに携わってきており、その批評眼と出版経験から、選択の確かさは保証ずみ。ファンタスチカがエルフや剣、ドラゴンと光線銃だけではないということがおわかりになるでしょう。
そういった訳で、あなたにはこの国にまだ存在していない素晴らしい短編のユニークな作品集を手にするチャンスがあるのです。文学ディナーにおける魅力的でカラフルな四つのコースを味わいたいですか。ファンタスチカの女流作家たちの類稀なる一団が自分たちの場を勝ち取るのをどうか助けてください。最初のコースでは以下の短編を提供します。
ヴィルマ・カドゥレチュコヴァー Vilma Kadlečková：Bez Krásky a bez zvířete（美女もなく、野獣もなく）
ルツィエ・ルカチョヴィチョヴァー Lucie Lukačovičová：Dům ocelových jehel（鉄の針の家）
ハニナ・ヴェセラー Hanina Veselá：Mizera z Mexika（メキシコ無情）
ヴァーツラヴァ・モルツァロヴァー Václava Molcarová：Běžím daleko, žiju blízko（遠くを走り、近くで生きる）ヤナ・ショウフロヴァー Jana Šouflová：Případ osla canterburského（カンタベリーのロバ事件）
カロリーナ・フランツォヴァー Karolína Francová：V mysli mojí vidíš stíny（わが思いの影）
レオナ・シュチバリーコヴァー Lenona Štiblaríková：Pekná noc na čary（魔法の素敵な夜）
ズザナ・ストジツカー Zuzana Stožická：Rubinova liečba（ルビンの治療）
ダナ・ベラノヴァー Dana Beranová：Nikdy neříkej nikdy（二度とないとは言わせない）
ダグマル・ピロホヴァー Dagmar Pirochová：Černý samet（黒いビロード）
ミロスラヴァ・ドゥヴォジャーコヴァーMiroslava Dvořáková：Návrat（帰還）
ズザナ・フロウシュコヴァー Zuzana Hloušková：Srdce z kamene（石の心臓）
ユリエ・ノヴァーコヴァー Julie Nováková：Etuda pro výjimečnou mysl（卓越した考えのためのエチュード）
本の体裁はＢ６版３６０ページ、カラーのカバーに白黒の挿絵になります。
カバーはわれわれのチーフ・デザイナー、ヤナ・マフェット・ショウフロヴァーが制作します。
われわれにはこのアンソロジーのためにボランティアとして働いてくれている献身的な編集チームと、プロジェクトを守る目的で新たに創設された非営利目的の出版社フォルトゥナがあります。
作家と小説が一枚のオリジナルカードに変身
全４巻にはタロットのシンボルに想を得た５２枚のスペシャル・カードが付録としてつきます。カードのサイズは手になじむよう７０×１００ミリを考えています。イラストの作者はハラデツ・クラーロヴェーのデザイナー・菌学者・評論家・神秘家のヤロスラフ・スヴォボダ。よく知られたシンボルや模様がまったく新しいヴィジュアル・コンセプトとなってあなたを楽しませることを期待してください。すべての人物画は作家たちがモデルになってます。
第一巻「貴婦人と獅子」には、選ばれた１３作品のイラストが入った１３枚のカードがついてきます。四巻全部を揃えて初めて、カードをコンプリートすることができるのです。もちろんカードには占いの説明が記載されています（わたしたちには作家たちの集まりに加え、経験豊かな占い師たちがついています）
> 「数巻におよぶアンソロジーとは多種多様なスタイル、アプローチ、そしてアイディアからなっているトランプの扇のようだ。収録作には考え得る限りのサブジャンル、方向性、そしてヴァリエーションが見てとれる。人はおのれの手札を見て、エース、キング、クイーンを数える。誰もが自分の嗜好に従い、個人の文学信念に適合する何かを見つけるのだ」 ルツィエ・ルカチョヴィチョヴァー <
リターン（お礼の品）
すべてのお礼の品はキャンペーンの終了後、おそらく１２月の初め、もっとも遅くてクリスマス前にお受け取りになれます（チェコの場合）。リターンの金額にはチェコ国内の送料が含まれています。本は書店で購入するよりも安い値段でご自宅に届けられます。
お礼の品の外国（スロヴァキアを含む）への送付は軽いもの（一冊もしくは二冊の本）が可能ですが、わたくしどもにコンタクトをとってください。手渡す方法か、あなたの寄付金に追加料金（重量により１００-２００コルナ）をお支払いいただくかを話し合う必要があります。外国にはクリスマスまでにお届けできる保証はありません。
また、その他のリターンには、選ばれた作家とのチャットや、ＳＦ大会での新作発表会で一緒に写真を撮ったり、作家の旧作の購入等が可能です。
あなたのサポートに感謝します！
フォルトゥナ出版
ズザナ・フロウシュコヴァー
ダグマル・ヴォンドゥラチュコヴァー
ヤン・フロウシェク
マルチン・ヴォンドゥラーチェク
ヤロスラフ・スヴォボダ
「貴婦人と獅子」の特典カードのプロモーション動画
〔Ｎｅｋｌａｎ 一言〕
チェコＳＦ・ファンタジィの紹介を始めて以来、ずっと感じているのは「男性作家よりも女性作家が元気、勢いがある」ということです。
その証拠がこのプロジェクトだと思い、皆さんに紹介させていただきました。
ぼくも小額ですが、寄付しました。因みに、このクラウドファンディングは目標額の５万コルナを無事達成しました。残りの三巻も無事出版できますように。