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Beton, kosti a sny

(コンクリート、骨、そして夢)

著  者:パヴェル・レンチーン

     Pavel Renčín

表紙絵:イジー・フサーク

     Jiří Husák

発行年:2009年

出版社:Argo

頁  数:200

 ISBN  :978-80-257-0154-6

〔解 説〕

 パヴェル・レンチーンが短編第一作を発表してから十年が過ぎた。この短編集にはその間に書かれた最良の作品が収められている。

 

 収録短編のすべてが、様々なガラスのかけらからなるモザイクのようだ。あるものはあなたを震えあがらせ、あるものは驚嘆させ、そしてあるものはなんとも言えぬ後悔の念を味あわせるだろう。詩あり、スリラーあり、冒険小説まである。ところが、いったんそれらすべてが一冊にまとまるや、現実と虚構が入り混じった、リアルな世界に見え隠れする超現実の探求へ姿を変えるのである。

                (出版社Argoの紹介より)

「この本でわたしがこれまでに自分が書いたもので最良の短編を選ぼうとした(少なくともそのはずだ)。これらの短編はもともといろんな短編集にばらばらに収められていたので、今回一冊の本にまとめられて世に出ることとなり、自分でも楽しみでならない。未発表の新作「血のバラード」を加えたが、これはこの本の中でもっとも暗い短編と言えるだろう。

 本のフォーマットは「黄金の十字架」 Zlatý kříž と同じ203ページ。素晴らしい表紙絵を描いてくれたのはイジー・フサーク。編集はイールカ(イジー)・ポピオレックで、謝辞はすべてのアイディアを思いついたマルチン・シュストに捧げられている」

              (作者のHPの自著解説より)

〔収録作〕

喋らず、眠らず、ただ踊る Jen tančí, nemluví, nespí
人形劇場 Loutkové divadlo
都会ネズミのための子守唄 Ukolébavka pro město krys
雪に触れずに踊れ Tanči mezi vločkami!
魔法使いの家 Čarodějův dům
ジャンプ Skokani
創造者 Stvořitel
三組の子どもサンダル Tři páry papuček
黄金の龍の翼に Na křídlech zlatých draků
血のバラード Balada krve

〔Neklan 一言〕

 もしNeklanがチェコの最新SF・ファンタジィを日本のファンに翻訳・紹介するとしたら、まずはこの短編集を選びます。

 Neklanは英語圏のものとも、ロシア・ポーランドのものとも、もちろん日本のものとも違う、チェコ独自のSF・ファンタジィ(しかも古い作品ではなく、今現在の最新のもの)を探してきましたが、レンチーンの作品を読んだとき、「ついに見つけた!」と叫びたくなりました。それほど彼の書くものは独創的で面白いのです。

 たとえば、この短編集に収録されている「ジャンプ」は、自殺の名所として知られるプラハのヌスレ橋に取材に来た新聞記者を主人公にした幽霊譚です。

 主人公が橋の上でメモをとっていると、突然背後から「遺書を書いてるのかい」と声をかけられます。驚いて振り返ると、そこには若者が。主人公は彼と短く言葉を交わしますが、一瞬目を離したすきに若者は消えてしまいます。そして後日、ヌスレ橋で自殺した人の新聞記事を主人公が漁っていると、写真の中に声をかけてきた青年の顔を見つけます。そう、彼は幽霊だったのです。

……と、ここまではよくある怪談話ですね。ところが、その後、主人公は飛び降り自殺した幽霊たちとヌスレ橋の上で次々出会い、あまつさえ彼らにインタビューをするようになり、ついには幽霊の集会に出席しないかとまで誘われ……

 どうです。予想もしなかった方に話が進んでいくでしょ。

 レンチーンは「チェコのニール・ゲイマン」と評されることがあります。確かに彼の作品はゲイマンと同様、アイディアが独創的で奇抜、文章は流麗、そして作品によっては詩的で美しかったり、ユーモアものがあったり、背筋がゾクッとするような怖いものがあったりと変幻自在。

 ああ~っ、レンチーンの作品を日本の皆さんにぜひ紹介したいです。読んでいただきたいです。

 幸いレンチーン氏とコンタクトがとることができ、とても気さくでいい人でしたので、なんとかこのHPででも彼の作品を公表できないか、そのうち尋ねてみます。ご期待ください。

パヴェル・レンチーン 自作「コンクリート、骨、そして夢」を語る

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